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物理トリック

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 写真は、今はなき「セカンド・ラジオ」の花とドライマティーニ。

 先日カクテルを飲みながら、辻村深月さんと密室について話していた時に、ここ何年かは「物理トリック以外」が主流になっているという話題が出た。確かに現状はその通りだと思う。
 しかし──その動機はともかくとして──今すぐ本気で密室を作ろうと思ったら「針と糸」が非常に簡単かつ現実的だろうという話もした(その時だったら「カクテル・ピンとセーターの糸」などを使用して)。
 また実際にぼくは、中学の頃からパズル感覚で(「千波くん」にもチラリと書いたように)色々な「針と糸の密室」パターンを考えて1人で遊んでいた。

 そして、その場では言い忘れてしまったのだけれど──これは決して恣意的にではなく、単に飲み過ぎていたのだが──実を言うとぼくはアナクロにも、「針と糸」の密室を1つ考えているのだ。もちろん、今のところまだ誰も使っていない(はず)。
 ところがこれが本当に何一つ痕跡を残さないと思えるので、小説の中では、かえって使えない。捜査しようにも、おそらく証拠が全くなくなってしまっているだろうし、部屋の中で余程のことが起こっていない限り、その事件性すら疑われないだろうと思われる。かといって、余りに単純なトリックなので、ミスをするとバカみたいだ。

 ということで、いつか何かの形にメタモルフォーゼさせて、遠い将来に(みなさんが今回の「Essay」の内容を忘れた頃に)どこかで使ってみたいと考えている。