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暗くなるまで待って

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 本気で余裕がない。
「忙しいと口に出すことは格好悪い」と言い聞かされて育った江戸っ子なので、およそ現実の6割減くらいでEssayに書いているのだが、そろそろ本当にマズい。
 しかもそんな中を、またしてもマイ・シスター・椹野道流んと出かけてしまった(おい!)。
 某女史は怒り、某女史は呆れ、某男性編集者(ミチルン担当)は「一体何が起こっているのか理解できない」という中を、2人で青山へ。

「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」(DID)に参加してきたのである。
 ご存じの方も多いと思うけれど、これは全く光のない中を、白杖(はくじょう)を手にして歩いてみましょうという催しである。具体的な詳しいことは調べていただくとして、つまり清水寺や善光寺の「胎内巡り」のスケールが大きい版、と思っていただければ間違いない。
 始まる前にスタッフから「何かご質問は?」と訊かれて、
「目は開けていた方が良いですか? それとも閉じていた方が良い?」
 と尋ねた参加者への答えが、
「どちらでも同じですよ」
 という答えの通りの空間であった。
 そしてその暗闇の中で何を体験したかということに関しては(恐怖話や笑い話など)楽に10000文字くらい書き記せるような気がする。けれども、これから体験される方のために自粛するが、すでにオープンになっている話などを書けば、その見えない空間には水が流れ、竹藪があり、橋を渡り……等、さまざまな体験をするのである。
 その空間に足を踏み入れた瞬間、人は暗闇から生まれて暗闇へと帰るのに、どうしてこんなに暗闇が怖いのだろうと思ってしまった。脳幹が、ぎりぎりと鍛えられていく感触──。
 ところが最後は、暗闇がとても暖かく感じられてきて、隣の人の気配もしっかり分かるようになった。不思議なものだ。 
 本気で怯え、そしてまた本気で笑えた、実に素敵な体験でした。ありがとうございました。

 その後は、なぜかもう1人の偽妹も参加して銀座で食事。そしてそのままアルカンに流れたら、全く偶然にも、はたまみさん夫妻が登場。一気に濃い夜になってしまった。
 ということで右側の写真は、アルカンで鑑賞した「ルパン三世」。